介護保険の自己負担金額が3割に。実際の増減をよく知っておこう

2017年の5月に成立した介護保険改正案。自己負担金額が3割までで、増えたという印象を受けやすいですが、実際にはそれほどの負担ではない場合、中小企業の方では、プラスになる場合もあります。安全な老後のために、介護保険をよく知っておきましょう。

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介護保険改正に伴う3割負担の詳細

介護保険制度の持続可能性の確保のための改正

厚生労働省の、2017年5月26日に成立した介護保険法などの改正法案、「介護保険の見直しについて」の副題は、「介護保険制度の持続可能性の確保」です。内容は、利用者負担のあり方として、世代間、世代内の公平性を確保しながら、介護保険制度の持続可能性を高めることを目的とすることで、2017年5月26日に参院本会議で可決し、成立しました。高齢化が進んで、介護費用の増加を避けられないため、高齢者や、現役世代の所得の高い人に負担を求める改正法案です。 一つめは高額介護サービス費の一般区分の月額上限額を、医療保険くらいに引き上げること。ただし、1割負担の世帯の、年間上限額として446,400円(3,7200円×12ヶ月)が設定されています。3年間の時限措置付きで、平成30年8月から施行されます。二つめは、自己負担が2割の負担者の中で、特に所得の高い層の自己負担を3割とすること。これは、月額44,400円の自己負担金額の上限があります。 その他に、高齢者の長期入院する「療養病床」という名前を、2017年度末に廃止してから作られる施設は、「介護医療院(仮称)」とする方針です。元の名前を使うことも一部認めながら、6年かけて改名することになる予定です。介護医療院に転換した後も、患者の費用負担は大きく増えない見通しです。悪質な有料老人ホームは、指導監督を一層強化して、現在よりも厳しい「事業停止命令」の措置が2018年4月から設けられる予定です。

介護保険サービス利用料は原則1割

介護保険の介護保険サービス利用料は、年収280万円未満の場合、原則1割で、対象者数は約451万人です。 介護保険サービス利用料が、2015年の8月に1割から2割まで引き上げになったことは、記憶に新しいことでした。そのときには、1割から2割に自己負担が増えるということは、負担額が倍になるのかと心配された人も多くいましたが、介護生活の支援措置として、「高額介護サービス費」制度があることで、実際には心配は不要でした。高額介護サービス費制度は、それぞれの所得に応じて5段階の上限額を設定して、月々の自己負担額が設定金額を超過すると、その分が払い戻される仕組みになっていました。

介護保険改正案の負担軽減策

収入の低い方、介護保険の利用料金が所得に対して高額になってしまう人が、介護保険サービスを無理なく利用できるための、負担軽減策があります。所得によって、負担軽減策が適用される金額は違ってきます。 ☑第1段階は、生活保護者または世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金を受給している場合 ☑第2段階は、世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以下の場合 ☑第3段階は、世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以上の場合 ☑第4段階は、第5段階以外の市区町村民税課税世帯 ☑第5段階は、世帯内に課税所得145万円以上の被保険者がいて、世帯内の第1号被保険者の収入の合計額が520万円以上か単身世帯の場合は383万円の場合

2018年 年収340万円以上を3割負担へ

2018年8月から、介護保険サービスの自己負担が2割から3割に上がる対象は、年344万円以上の収入がある人になります。対象になるのは約12万人で、利用者の約3%にあたります。 2015年の1割から2割へ引き上げのときと違うのは、今回の改正法案は、高額介護サービス費の上限額も見直しが検討されています。内容は、5段階のうち4段階が「世帯のうち誰かが市区町村民税を納めている世帯」で、その上限額37,200円を、5段階の「現役並み所得者(またはそれに相当する人)がいる世帯」の上限額と同じ金額44,400円に引き上げるということです。

具体的な基準は今後政令で定める

2017年5月25日に成立した介護保険改正法案の3割負担については、具体的な所得水準は、今後政令で決めていくことになっています。厚生労働省は、単身で年収340万円、年金収入のみの場合は344万円、夫婦世帯では年収463万円以上の人を対象として検討しています。

月額の自己負担上限を4万4,000円

毎月の負担額には上限が設けられていて、単身で年収383万円以上の人または、世帯内45万円以上+世帯年収520万円以上の人は、上限4万4.400円になるので、介護サービスの利用が多い人は、自己負担金額が増えないこともあります。この介護法改正案で、厚生労働省は、一年に約100億円の介護費の抑制効果があるとみています。

1割負担者の利用料上限を設定

高額介護サービス費の上限額が一部引き上げられることで、今まで1割負担だった対象者も、一部上限額の引き上げがあります。今回の介護保険改正案での対象は、年収383万円未満で住民税を支払っている単身世帯です。2人以上の世帯は年収520万円未満になります。月々の自己負担金額の上限は、3万7,200円から4万4,400円になりました。 ただし、65歳以上が2人以上で家族全員の自己負担割合が1割の世帯は、激変を緩和するため、年間上限額を3万7,200円の×12ヶ月分(44万6,400円)のままで3年間据え置くことになります。現役並みの所得がある世帯が、2018年8月から自己負担金額の割合が3割に引き上げられることを配慮して、上限の引き上げは見送られました。生活保護など、低所得の世帯は今までと変わりありません。

3割負担対象者は利用者の3%程度

3割負担の対象者は、年344万円以上の収入がある人で、全体の介護サービス利用者の約3%、約12万人になります。 3割負担が実施された場合の例をあげると、祖母が介護保険利用者、その子どもである父親が市民税を納めている世帯(第4段階)で、それまで介護保険を月額42,000円分利用していた場合、今までなら上限額の超過分4,800円が払い戻されていましたが、2018年8月からはその超過分は全額自分の支払いになります。それほど大きな金額ではありませんが、月々の生活費で考えると約5,000円が毎月の差額になります。

医療での自己負担金額の上限引き上げ

2017年8月から、医療では患者の「高額療養費制度」で、70歳以上を対象に上限額を引き上げます。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の自己負担金額の上限が月2,000円上がり、1万4,000になります。2018年8月にはさらに外来の月額が1万8,000円に引き上げが予定されています。約1,240万人が対象です。 長期治療する患者への負担が大きいとの批判を考慮して、年間限度額が設定されました。今までの月額1万2千円の12ヶ月分に当たる14万4千円となりました。4回以上受診した場合(多数回)の世帯の月々の限度額は、1万3,200円増しで月額5万7,600円に引き上げられます。

介護保険改正に伴う介護保険料の変更

40歳から64歳の第2号被保険者の保険料負担増す

40〜64歳の第2号被保険者が支払う介護保険料は、現行は健康保険組合などの加入者数に応じ頭割りにしていますが、新しく、収入によって負担が増減する「総報酬割」という計算方法が導入されます。この計算方法によって、大企業の社員、公務員など約1,300万人は介護保険料の負担が増えることになります。

中小企業1700万人程度は負担減見通し

介護保険の新しい計算方法「総報酬割」を使うことによって、中小企業を中心に約1,700万人は負担が減ることになります。中小企業で今回の介護保険料改正案による増減は、協会けんぽ、健康組合、共済組合など、加入している社会保険によって変わってきます。 2019年4月に予想される増減で、一つめは、協会けんぽ加入の場合、平均月額介護保険料は4,043円。増減額はマイナス241円です。協会けんぽ加入は、約1,437万人が加入していて、中小企業の加入者が多い保険です。二つめは、健保組合加入の場合、平均月額介護保険料は5,852円。増減額はプラス727円です。健保組合加入は、約1,138万人が加入していて、大企業の加入者が多い保険です。三つめは、共済組合加入の場合、平均月額介護保険料は7,097円。増減額はプラス1,972円です。共済組合加入は、約350万人加入していて、公務員の加入者のための保険です。 この3つの社会保険で、どのくらい財源が増えるかというと、協会けんぽは自己負担金額がマイナスで、全体で約420億円のマイナスとなります。健保組合は自己負担金額がプラスで、全体で約980億円プラスになります。共済組合は自己負担金額がプラスで、全体では約890億円プラスの見込みになります。 国民の負担を増やすことが目的ではなく、介護保険の持続のためで、介護保険を国民全体で作っていくための介護保険改正案です。ひとりひとりの安心できる老後のために、大切な介護保険料を理解していくことが必要です。

2017年8月から4段階で実施

介護保険改正に伴う3割負担は、2017年8月から4段階で実施されます。最初に、健康保険組合などが負担する金額の2分の1くらいにして、段階的に増やし、2020年に全面的な実施をすることになります。 この介護保険改正法案によって、負担が増える場合の自己負担金額は、現在、平均月700円以上(事業者負担分を含む)増える予定です。厚生労働省は、全面実施によって、国費を年約1,600億円抑えられるとみています。 介護保険の費用は、介護保険制度が始まった2000年度の3兆6千億円から増加し続けて、現在は10兆円を超えています。現役の世代が75歳以上になる2025年には、約20兆円に達するとの見通しもあります。自己負担金額を増やすだけではなく、特別養護老人ホームへの新規の入所を要介護3以上の人に限るなどの、サービスの絞り込みも行われ始めています。

間違った判断で介護サービスを控えることはしない

介護保険の自己負担が2割、または3割になるなら、介護保険を利用するのは控えようという考えは、間違った判断になりやすいです。介護サービスを控えることは、利用者の負担、症状の悪化と、家族の負担、疲労を進める場合もあります。月額上限額があるので、たくさん介護サービスを利用する人には、それほどの差はない場合も多いです。どうしても、金額的に不安がある場合は、ケアマネージャーなどとよく相談してください。 何よりも、介護される本人によい状態であること、家族が疲労しすぎないで、予算的にもやっていける範囲で、折り合いのよいところで検討しましょう。

改正に伴う詳細は今後の政令にて決定するので要注目

介護保険の自己負担3割は、自己負担金額の上限があるので、たくさん介護サービスなどで使っている人には気にならない程度ならよいのですが、負担軽減案の段階による引き上げも影響はあります。ケアマネージャーとケアプランを見直して、自己負担金額も予算内で介護生活をしていけるように、よく相談しましょう。 大企業、中小企業の社会保険も、今までと違うところです。協会けんぽ、健保組合、共済組合で、プラスマイナスで納得いく保険金額になるか確認してください。無理のない自己負担金額だったら、サービスを減らして金額を減らすのではなく、ケアマネージャーによく相談して、利用者本人も、家族も、納得のいく介護生活をしていけるように、よい介護のしかたを検討しましょう。

公認会計士・税理士 伊藤 温志

エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
会計事務所の経営を通じ1,000社を超える顧客の税務/会計/保険/資産運用の相談に対応。
通常の代理店ではみれない顧客情報を扱っていることから、豊富な引出しを有し多くのお客さまから支持を集めている。